意思表示

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意思表示

意思表示っていっても、正直なんのこっちゃわからんにゃ。
すな子、分かりやすく説明してくれにゃ。

一定の法律効果を欲する意思を外部に表明する行為。
例えば、「売ります」「買います」っていう自分の意思を相手に伝えるってことだね。

なるほど。簡単だにゃ。
しかし、この意思表示が意思通りにされた場合は問題がないが、そうもいかんっちゅ〜こっちゃにゃ。

そうだね。たとえば、売りたくないのに、相手に騙されたり、脅されたりして仕方なく「売ります」って言ってしまった場合はどうなるの?問題だよね。大切な物を騙されたり、脅されたりしたら、みんなの財産が保護されなくなってしまう。

民法では、意思表示に何らかの瑕疵かし欠缺けんけつ(真意ではない、脅された、騙された、勘違いした)がある場合、つまり意思にキズがついている場合は、契約を取消したり無効にしたりして保護しているんだね。

なるほどなぁ〜。
ほんなら、どんな瑕疵や欠缺がある意思表示があるか見ていこうにゃ。

心裡留保(しんりりゅうほ)

表意者が、表示行為に対応する内心的効果意思のないことを自覚しながら、意思表示を行うことを心裡留保しんりりゅうほという。

具体例として、例えば、Ⓐの所有するアパートの1室について、部屋を探しているⒷが「今はこの部屋を借りるつもりはないけど、他の人に借りられたら困るなぁ」なんて理由で、その部屋を利用するつもりはないのに、相手を信用させるために契約するという嘘の意思表示をする場合なんかをいうよ。

それから、冗談で契約するってのもあるよね。
100万円のダイヤモンドをあげるつもりもないのに、冗談で「タダであげるよ」って言った場合の意思表示のことだね。

その場合どうなるにゃ。

原則、有効となるよ。いくら、冗談で100万円のダイヤモンドを「タダであげるよ」って言った場合でも、その契約は有効となる。でも、言われた方も、冗談だって知っていた場合や、100万円のダイヤモンドをタダで貰えるなんて常識で考えてあるわけないって、それが冗談だって知ることができたときは無効になるけどね。

それが、民法93条1項ってことだにゃ。ほんなら、2項は例外の例外で、万が一相手方が冗談やって分かってたり、それを知ることができて無効になったものでも、その相手方が第三者と契約してしまった場合、その第三者が善意の場合は取り戻すことができないっちゅ〜ことだにゃ。

第93条(心留保)
  1. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
  2. 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

表意者が無効を主張するためには、自らの意思表示について
①内心的効果意思が欠如していること
②それを意思表示の時に自覚していること
③相手方がそれを知っていたか、知らないことに過失があったこと
を、証明する必要がある。

通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)

ほんなら、次は虚偽表示について勉強してみるにゃ。

当事者間に意思表示の効果不発生の合意(通謀つうぼう)があるため、意思表示の効果が否定される場合を虚偽表示というよ。

分かりやすく言うと、、、、
売るつもりがないのに「売ります」、買うつもりがないのに「買います」と示し合わせて嘘の意思表示を互いにすること。

なるほど、、、「示し合わす」行為だから、通謀虚偽表示って表現するんだにゃ。自分たちの財産を隠したりするために嘘をついたりして「ずるい方法」なんだにゃ。

そうだね。例えば、自己の所有する土地を債権者に差し押さえられそうにられそうになって、それを防ぐ為に、知人に頼んで売却したって、虚偽(嘘)の契約書を作ってしまい、知人の名義に登記移転をした。とかね。
この場合、当事者間に意思表示の効果不発生の合意があるってことになるよね。

その他にも、贈与税を免れる為に本当は贈与しているのにもかかわらず、Ⓐを売主、Ⓑを買主をしてあたかも売買契約があったように見せかけて虚偽の契約書を作ったりっていう例もあるよ。

そりゃ、ダメだな。この場合は当然無効ってことでイイんだよにゃ?

相手方と通じてした虚偽の意思表示は原則無効だよ[94条1項]
無効であるための要件は、①相手方との間に効果不発生の合意(通謀)が存在すること、②およびその合意に基づいた意思表示があること。
表意者は、通謀の立証により、意思表示が無効であることを主張できる。

ここで、この虚偽表示によってなされた法律行為を信頼して法律行為に入ってしまった第三者を保護するために、「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」という決まりがあるんだにゃ。

その通りだよ!
例えば、さっきの例で言えば、自己Ⓐの所有する土地を債権者に差し押さえられそうになって、それを防ぐ為に、知人Ⓑに頼んで売却したって、虚偽(嘘)の契約書を作って知人Ⓑの名義に登記移転をした。ココまでは、無効になるよね。

 

だけど、この知人Ⓑが悪いやヤツで、他の人Ⓒに売ってしまったとするとどうなるの?

ⒶⒷ間の契約が虚偽表示で無効だから、ⒷⒸ間の契約も無効ってなってしまったらⒸさんは、せっかく土地を取得したと思ったのに手に入らないってなったら、かわいそうだよね。だから、虚偽の取引だって知らずに取引に入った第三者として、保護されることになるよ。

これが、94条2項の「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」になるんだにゃ。

第三者の具体的範囲

【第三者にあたる例】
①Ⓑから土地を譲り受けた者
②土地を差し押さえたⒷの債権者[最判昭48.6.28]
③土地についてⒷから抵当権を受けた者[大判昭6.10.24]

【第三者にあたらない例】
④Ⓑが土地を所有してると信じてⒷに金銭を貸し付けた者[大判大9.7.23]
⑤Ⓑが土地の上に建築した建物の賃借人[最判昭48.6.28]

第三者からの転得者
Ⓐ←通謀→Ⓑ→悪意のⒸ→善意のⒹ の場合
ⒹはⒶとの関係で94条2項の第三者に当たる[最判昭45.7.24]
Ⓐ←通謀→Ⓑ→善意のⒸ→悪意のⒹ の場合
いったん善意の第三者が保護を受けると、そこからの転得者は善意・悪意を問わず保護される。
これは、悪意の転得者Ⓓの保護というよりも、善意で土地を取得したⒸが次に土地を売却する機会を損ねないためである。
第94条(虚偽表示)
  1. 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
  2. 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

錯誤(さくご)

錯誤による意思表示とは、表意者本人の意識しない形で、本人の意に沿わない意思表示がされた場合をいう。

つまりは、日常用語でいう勘違いってやっちゃな。

錯誤にはおおきく分けて次の2種類があるよ。

①意思表示に対応する意思を欠く錯誤[95条1項1号

例えば、ブランドAのバックをブランドBのバックだと思い込んで、本当はブランドBのバックが欲しいのに「ブランドAのバックをください」と言ったような場合。
このような錯誤を内容の錯誤という。
また、赤いバックと言おうとしてピンクのバックと言ってしまった場合も錯誤に含まれ、このような錯誤を表示の錯誤という。

②表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤[95条1項2号]

例えば、バックが限定品でありとても希少価値のあるバックだと思ったから少し高くても購入しようと思ったが、実は限定品でも希少価値のあるバックでもなかった場合。
このような錯誤を動機の錯誤という。

表意者が錯誤によって意思表示した場合、原則その意思表示は取り消すことができるよ。[95条1項本文

原則といえば、例外があるっちゅ〜ことだにゃ!

①表意者に重過失がある場合
例外:錯誤が表意者の重過失(あまりにも酷い勘違い)によるものであった場合は取消不可
一般人に期待される注意を著しく欠いている場合は、表意者を保護する必要がないから

②相手方の事情
例外の例外:表意者に重過失がある場合でも、
ⅰ. 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき[95条3項1号
ⅱ. 相手方が表意者と同一の錯誤に陥ってたとき[95条3項2号

表意者が錯誤によって意思表示をした場合、その意思表示は取り消すことができる![95条1項本文
だけど、この取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することはできないよ![95条4項

第95条(錯誤)
  1. 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
    ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
    ② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
  2. 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
  3. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
    ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
    ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
  4. 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

詐欺・強迫

詐欺と強迫による意思表示を取り消すことができる。
詐欺による意思表示と、強迫による意思表示は、内心的効果意思は一応存在しているが、その意思を表示する過程に、他人の不法な関与があったという共通点がある。

詐欺による意思表示
詐欺による取消し要件
  1. 人をだます行為を意思表示の相手方が行った場合
    ①表意者に対する違法な欺罔きもう行為があること
    ②欺罔行為により表意者が錯誤に陥ったこと
    ③表意者が(欺罔行為による)錯誤により意思表示をしたこと
    ④欺罔行為者に故意があること
  2. 第三者が行った場合
    ①〜④の要件に加えて
    ⑤意思表示の相手方が詐欺の事実を知り、または知ることができたこと[96条2項]
    ※相手方が直接に欺罔行為をしたわけではないため、取引の安全を考慮して取消しの範囲を限定する趣旨。
詐欺の効果

詐欺による意思表示は取り消すことができるんやで![96条1項]

  1. 取消権者[120条2項]
    ①表意者本人
    ②代理人
    ③承継人
    ※取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる[121条]
    ※表意者によって追認できる[122条]
  2. 善意の第三者の保護
    詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない[96条3項]
    この場合の第三者とは、
    詐欺による意思表示が有効である間に、新たに法律上の利害関係をゆうするに至ったものである必要がある。
強迫による意思表示
強迫による取消しの要件

①表意者に対する違法な強迫行為があること
②強迫行為により表意者が畏怖いふ(恐れおののく)したこと
③表意者が畏怖により意思表示したこと
④強迫行為者に恋があること

強迫の効果
  1. 取消権者[120条2項]
    ①表意者本人
    ②代理人
    ③承継人
    ※取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる[121条]
    ※表意者によって追認できる[122条]
  2. 善意の第三者の保護
    善意の第三者を保護する規定はない。
    強迫の場合、表意者の帰責性は小さく、表意者を犠牲にして第三者の信頼を保護することは適当でないと考えられるため。

まとめ

種類 原則 例外 第三者保護 備考
心裡留保 有効 相手方が悪意又は有過失のときは無効[第93条但書] 善意の第三者は対抗できない
[第93条2項]
転得者はたとえ悪意であっても、権利を有効に承継取得する
自分で勝手に嘘をつくこと

通謀
虚偽表示

無効 善意の第三者は対抗できない
[第94条2項]
※たとえ対抗要件を具備していなくても善意の第三者は保護される。
【第三者に該当する】
①抵当権の設定を受けた者
②債権の譲受人
③目的物を譲り受けた転得者
④目的物を差し押さえた一般債権者
【第三者に当たらない者】
①虚偽表示により債権を譲り受けた者から、取立てのために当該の債権を譲り受けたもの大決大9.10.18]
②土地の賃借人が所有する地上建物を他に仮装譲渡した場合の土地賃貸人[最判昭38.11.28]
③土地の仮装譲受人から当該土地上の建物を賃借したもの[最判昭57.6.8]
お互いウソをついている
錯誤 取消し可 表意者に重大な瑕疵がある場合は取消し不可
※1
善意・無過失の第三者は対抗できない ※1
表意者に重過失がある場合でも、相手方に以下のいずれかの事情がある場合には、 例外の例外として、表意者は錯誤取消しの主張が可能て[95 条 3 項各号]
❶ 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
❷ 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
①思い込んで間違う(内容の錯誤)②言い間違い、表示の間違い(表示の錯誤) ③買う動機等を勘違いする(動機の錯誤)
詐欺 取消し可 第三者詐欺の場合
※2
善意・無過失の第三者は対抗できない ※2
第三者詐欺の場合、相手方が詐欺の事実を知っていたとき、又は知ることができたときに限り(悪意又は有過失の場合)、その意思表示を取り消すことができます[96 条 2 項]
騙す行為 → 瑕疵ある意思表示
強迫 取消し可 善意・悪意にかかわらず第三者は保護されない
畏怖を与える(強く迫る) → 瑕疵ある意思表示
取消権者 ①瑕疵ある意思表示をした者(本人)
②その代理人
③承継人(包括承継人・特定承継人)   [第120条2項]
無効 初めから契約などの効果が生じないこと
取消し 契約等は一応有効であるが、取り消されると遡って無効になる(取消されるまでは有効)
取消権は当事者のみで、第三者には及ばない。
取消権 追認出来るときから5年、行為の時から20年で消滅する
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